首の痛み・肩のこり
頭部を支える首や、首から肩にかけての筋肉には常に負荷がかかっているため、トラブルにつながりやすい状況にあります。首の痛みのほとんどは、筋肉の緊張や疲労が原因でおこる、いわゆる肩こりです。しかし、加齢に伴って頸椎や周辺の組織が変性を起こすと、脊髄などの神経が圧迫されて、上肢の痛み、手足のしびれなどの症状があらわれることもあります。
頚椎捻挫(むち打ち症、寝違え)
頚椎に強い外力が加わり、腱や筋肉が損傷してしまうケガを、頚椎捻挫といいます。原因として多いのは、交通事故です。衝撃で、体が鞭のようにしなることから、むち打ち症ともよばれます。また、ラグビーのようなコンタクトスポーツでも、同様のケガを引き起こすことが多いです。
日常的なきっかけとしては、寝違えがあげられます。脊椎は寝ているときでも自然なS字カーブを描いていることが望まれます。うつ伏せの姿勢で寝ると、背中や首の後ろの筋肉が圧迫され、血行が悪くなってしまいます。その負担が、首周辺の筋肉に積み重なり、寝返りを打ったときに損傷してしまうことがあります。寝ているときに限らず、日常生活のなかで首こりや肩こりの自覚がある方は、寝違えを起こしやすいため注意が必要です。
変形性頚椎症
加齢により椎間板が変性したり、椎骨と椎骨をつなぐ椎間間接が変形して、椎骨の縁に骨棘(こつきょく)とよばれるトゲのようなものができることで起きる病気です。
本来、椎間板は動きに伴う衝撃を吸収するクッションの役割をしています。しかし、加齢とともに椎間板は弾力や厚みを失い潰れていきます。次第に、椎骨どうしのつながりが不安定になるため、椎骨は支えを強化するために増殖性に変化します。これが骨棘です。
骨棘が背中側にできると、神経根を刺激して、症状が現れます。 はじめは肩こりや、首肩背中の軽い痺れや痛みといった症状です。進行すると、腕や手足にまで症状は広がり、やがて重圧感や麻痺、後頭部の痛み、脱力感などの重い症状があらわれます。
軽度ならば、温熱療法、装具療法、牽引療法などの保存的療法が行われます。 日常生活が困難なほど重度な場合は、手術を検討することもあります。
頚椎椎間板ヘルニア
椎骨と椎骨の間でクッションのように挟まっている椎間板は、ゼリー状の瑞核とそれを取り囲む線維輪の二重構造となっています。 加齢などが原因で椎間板に含まれる水分が徐々に減少すると、弾力を失った椎間板は薄く硬くなり、このような変質が進むと線維輪に亀裂が生じます。頚椎椎間板ヘルニアは、その亀裂から椎間板内の随核が飛び出して、脊椎や神経を圧迫する病態です。 脊髄や神経根が圧迫されると、くびや肩、背中、腕、指先に痛みや痺れ、重圧感といった症状が現れます。
保存的療法では症状が改善しない場合や、脊髄が強く圧迫されている場合は、手術が検討されます。 そして、組織が硬くなる過程には炎症が関与していると考えられているため、抗炎症薬なども使用されます。
治療効果は個々の症状や進行具合によりますが、早期に診断・治療を始めることで、患者さんの日常生活を大きく改善することができます。
頚肩腕症候群
くび、肩、背中の筋肉の緊張状態が続いて血行障害を起こし、筋肉が疲労した状態を頸肩腕症候群といいます。いわゆる、肩こりの症状がでる病態です。くび、肩、背中にかけての筋肉のだるさ、不快感や違和感、しびれ、鈍痛などの症状があります。
痛みや違和感のほとんどは、筋肉の緊張状態からくる筋肉疲労や血行障害なので、温熱療法や物理療法等の保存的療法で改善するケースがほとんどです。 一方で、一見、何の関係もない臓器や組織に異常があるとき、くび・肩・背中などに痛みが出ることがあります。
なかには命にかかわるような重大な病気が隠れていることも少なくありません。 改善しない場合は、より精密な検査が必要な場合もあります。
頚椎後縦靭帯骨化症
脊柱の周囲には3本の靭帯があり、椎骨どうしのつながりを補強しています。そのうち後縦靱帯は、椎骨の連なりからなる脊柱管のなかを通る靱帯です。
靭帯は本来、しなやかで弾力性があり、骨や筋肉をつなげてそれぞれの動きをサポートしています。 ところが、なんらかの原因で靱帯が骨のように厚くなってしまうことがあります。この靭帯が硬くなることを骨化といい、後縦靭帯に起きたものを後縦靭帯骨化症といいます。
後縦靭帯が骨化すると、脊柱管の中を通る脊髄が圧迫されてしまうため、手足の痛み、手指のしびれなどの症状が現れます。さらに進行して重症化すると、排尿障害や歩行障害を引き起こすこともあります。
後縦靭帯が骨化してしまう原因は、未だ解明されていません。そのため、この病気は厚生労働省により難病に指定されています。 神経根の圧迫によって、しびれや痛みが生じている場合には、頸椎の動きによる刺激を軽減させるために頸椎固定装具を装用します。