骨粗鬆症とは
骨がスカスカになり、もろくなってしまう病気
骨は脳や内臓などの重要な臓器を外部から守ったり、体を支えたりする重要な役割があるほか、体内のカルシウムの99%を蓄えています。骨粗鬆症とはその骨の骨量や骨密度が低下して骨がスカスカになり、もろくなってしまう病気です。
骨密度とは、骨に含まれるカルシウムなどの量を表しています。骨密度は若年期がピークであり、年齢とともに下がっていきます。骨密度が減少すると、骨折しやすくなり、体の重みで背骨がつぶれたり、背中が曲がったり、変形して圧迫骨折を起こしたりなどにつながります。
超高齢化社会の日本には、約1000万人以上の骨粗鬆症患者がいるとされているほど多い疾患です。日本で寝たきりになる原因では、第3位が転倒による骨折です。また、介護が必要になる原因の約1割が骨折や転倒によるものだとされています。
生活の質を守るために、そして健康寿命のためにも、骨粗鬆症は特に注意が必要な疾患です。
骨折が起こりやすい部位
とくに
- 背骨(脊椎椎体)
- 肋骨
- 太ももの付け根(大腿骨近位部)
- 手首(橈骨遠位端)
- 腕の付け根(上腕骨近位部)
これらの場所に骨折が起こりやすいといわれています。
「いつのまにか骨折」は骨折の連鎖を引き起こす
背骨は、上下からの圧力により圧迫骨折が発生しやすい状態になります。しかし、椎体骨折の3分の2の患者様は、痛みを感じずに無症状であると言われています。
骨折していることに気づかない人も多く存在いらっしゃいます。このように、骨粗鬆症によって骨がスカスカになると、自分の体重に背骨が耐え切れなくなって、気づかないうちに背骨がつぶれて「いつのまにか骨折」してしまうことがあります。
骨粗鬆症の骨折は、1個でも骨折していると周りの骨に負担がかかり、2個、3個と骨折がドミノ倒しのように次々に起こっていきます。骨がスカスカになると、荷物を持ち上げる、尻もちをつくなどちょっとしたことで背骨がつぶれてしまします(背骨の骨折)。
「転んだりしてないし、痛みはないから大丈夫。そんな大げさな病気じゃない」と思っていませんか?骨粗鬆症は、そんな方にこそ気をつけていただきたい病気です。
骨粗鬆症の原因
閉経後の女性は骨粗鬆症に注意
骨粗鬆症の主な原因となるのは加齢です。人の骨は、古くなると壊される骨吸収と、そこに新しい骨が作られる骨形成というサイクルが繰り返し行われています。この働きを新陳代謝といい、骨吸収と骨形成のバランスが保たれていることで骨が再構築されて、健康的な骨を維持することができます。
10代のような成長期では、この骨形成の働きが活発となりますが、加齢に伴って新陳代謝のバランスが徐々に崩れ、骨吸収の働きが活発になってしまいます。
女性の骨粗鬆症リスク
骨粗鬆症を発症する患者様の約8割は女性で、特に閉経後の女性に多くみられる傾向があります。女性ホルモンの1つであるエストロゲンには、骨形成を促し、骨吸収を抑制する働きがあります。
閉経によって、このエストロゲンの分泌が減少することで、骨密度が低下します。そのため、閉経を迎える50歳前後には、骨量が急激に減少し、骨折リスクが徐々に高まっていきます。実際、60歳代では半数の方が70歳以上では2/3程度が骨粗鬆症です。
骨粗鬆症は加齢以外にも、偏食、ダイエット、喫煙、飲酒、運動不足などが発症の要因と考えられています。若い女性が発症するケースもあるため注意が必要です。
また、続発性骨粗鬆症と呼ばれるものでは、関節リウマチや糖尿病、慢性腎不全、ステロイドの長期服用などによって起こるとされています。
骨粗鬆症の検査診断
藤沢市で骨粗鬆症の検査診断は当院へ
症状を詳しくうかがった上で、
- 身体所見
- X線撮影
- 骨密度測定
- 血液・尿検査
などを実施します。
骨粗鬆症の診断には、正確な骨密度測定が必要です。当院ではDEXA(デキサ)法とよばれる測定方法を採用しています。DEXA法は、微量なX線を利用して正確な骨密度を測定する方法であり、日本骨粗鬆学会のガイドラインでも推奨されています。
※ 骨折でご来院された場合、健常な骨であれば通常骨折を起こさないような軽い衝撃によって生じた脆弱性骨折を、骨粗鬆症と診断する場合もあります。
骨粗鬆症の予防と治療
生活習慣の改善と薬物療法
骨粗鬆症の発症リスクは年齢や性別、遺伝的な体質などによって変わりますが、食生活や運動などの生活習慣の改善によって、骨量減少の予防ができます。
症状が進んでいる場合には、生活習慣改善に加えて薬物療法も行います。
食事療法
骨は、壊す働きをする「破骨細胞」によって吸収されますが、その部分に骨を作る「骨芽細胞」が新しい骨を作っています。こうした代謝作用をリモデリングと呼びます。
骨粗鬆症を治療・予防するためには、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質だけでなく、リモデリングに必要なビタミンD・Kなどの摂取も重要になってきます。
予防・治療のために必要な栄養素(1日)
- カルシウム700~800mg(食品として)
- ビタミンD400~800IU
- ビタミンK250~300μg
こうした栄養素を積極的に摂取しながら、バランスのよい食事を心がけます。
避けるべき食品は特にありませんが、取り過ぎに注意したいものに、リンや食塩、カフェイン、アルコールなどがあります。
積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品
-
カルシウム
乳製品、干しえび、しらす、ひじき、いわしの丸干し、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤなど -
たんぱく質
肉類、魚類、卵、乳製品、大豆など -
ビタミンD
アンコウの肝、しらす干し、いわしの丸干し、鮭、うなぎ、きくらげ、煮干し、干ししいたけなど -
ビタミンK
納豆、抹茶、パセリ、モロヘイヤ、しゅんぎく、小松菜、ほうれん草、かいわれ大根、にらなど
運動療法
運動をして負荷をかけると骨は増えて丈夫になり、筋力は体を支えるサポートをしてくれるので筋力アップは骨への負担を減少させます。また、運動を習慣的に行っているとバランス感覚が鍛えられるため、転倒リスクも減少します。また、背骨の強化には背筋のトレーニングが重要です。
骨量を増やすための運動には、激しい運動の必要はなく、ウォーキングや散歩なども効果的です。ただし、毎日、あるいは数に3回程度を長く続けるようにしてください。
薬物療法
骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、新しい骨を作る骨の形成を助ける「骨形成促進剤」、そして骨を作るために不可欠な栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などを使った治療を行っています。
年齢や症状などにきめ細かく合わせて、薬物療法の必要性をしっかり判断した上で、最適なお薬を処方しています。